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東京高等裁判所 昭和48年(行コ)33号 判決

東京都荒川区西尾久四丁目四番一一号

控訴人

門田浅吉

右訴訟代理人弁護士

鶴見祐策

関原勇

東京都荒川区日暮里町七丁目四八三番地

被控訴人

荒川税務署長

鎗田健亮

右指定代理人

山田巌

柳沢正則

根本孟郎

和泉田三喜造

蟻坂欣一

宮地夏雄

虎谷武治

右当事者間の課税処分取消請求控訴事件につき、次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴人は、「原判決を取消す。被控訴人が控訴人の昭和三八年分の所得税について昭和三九年一二月一一日付をもつてした更正処分を取消す。訴訟費用は第一、第二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は、主文同旨の判決を求めた。

当事者双方の主張及び証拠関係は、次に附加する外、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。

控訴人は、甲第四ないし第六号証を提出し、当審証人門田吉良の証言(第一、第二回)を援用し、乙第七号証の一、二、第八号証の成立は不知と述べた。

被控訴人は、当審証人中島啓典の証言を援用し、甲第四号証の原本の存在及び成立は認めるが、甲第五、第六号証の成立は不知と述べた。

理由

当裁判所は、控訴人の本訴請求は理由がないと判断する。その理由は、次に附加する外、原判決理由説示と同一(ただし、原判決三一枚目裏四行目及び三二枚目表三行目に「弁論の全趣旨により」とあるのをそれぞれ「当審における証人中島啓典の証言により」と、三九枚目裏四行目の「証人」を「原審及び当審における証人」と改める。)であるから、これを引用する。

控訴人は当審において甲第六号証を提出し、当審証人門田吉良は、甲第六号証は同証人が売上伝票に基いて作成したものであつて、控訴人の昭和三八年分の酒類の値引額は同号証記載のとおり合計四〇万四、一二三円である旨供述するが、控訴人が昭和三九年被控訴人の調査に対して提出した売上伝票のうち完備していたものは飲食店向ビール昭和三八年一〇月分のみであつたにもかかわらず、右甲第六号証の内容は、原審の昭和四四年五月二八日付準備書面に始めて主張され、同号証は昭和五〇年二月一九日当審口頭弁論において提出されたものであるから、右供述は措信し難く、また、同号証が正確な資料に基いて作成されたものとは認められない。

原本の存在及び成立に争いのない甲第四号証(訴外吉原利一の別件証人調書)には、右吉原の証言時である昭和四九年二月より一〇年位前に二年間位にわたり控訴人方に「横山」という従業員がいた旨の供述記載があるけれども、右供述は具体性に乏しく、また、当審における証人門田吉良の証言により同人が昭和四九年に撮影したものと認められる甲第五号証(レジスターの写真)によれば、レジスターに控訴人一家と思われる「父」「母」「吉良」の名及び「青山」の名と並んで「健治」という名が見られるが、同号証は昭和五〇年二月当審において始めて提出されたものであつて、これをもつて直ちに昭和三八年度に横山健治が控訴人方従業員であつたものと推認することはできない。

したがつて、右甲各号証をもつて原審認定を左右するところはなく、また、当審証人門田吉良の供述も、原審認定に供した資料及び当審証人中島啓典の証言に対比し措信できない。

よつて、控訴人の本訴請求を棄却した原判決は正当であるから、本件控訴を棄却し、控訴費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九五条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 渡辺一雄 裁判官 宍戸清七 大前和俊)

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